獅子窟寺
ししくつじ
巨石信仰の片鱗がうかがえる名刹「獅子窟寺」
弘法大師空海を宗祖とし、高野山金剛峰寺を本山とする高野山真言宗の寺院。
山号は普見山(ふみさん)。
境内には、獅子が吠える口に似ている巨石群の「獅子窟」があり、寺の名の由来となっています。
ご本尊の薬師如来坐像は、国宝に指定されており、平安時代前期の制作と推定されます。
※国宝の拝観は、1週間~10日ほど前に事前予約が必要です。拝観料は一人500円。
※国宝薬師如来坐像は、特別な許可を得て撮影しています。
交野八景「獅子窟の青嵐」に選ばれています。
住所 | ― | 大阪府交野市大字私市2387 |
交通手段 | ― | 京阪電車交野線「河内森駅」または「私市駅」下車 徒歩約40分 JR・学研都市線「河内磐船駅」下車 徒歩約40分 |
電話番号 | ― | 072-891-6693 |
営業時間 | ― | 9:00~16:00 |
定休日 | ― | なし |
駐車場 | ― | なし |
急こう配の参道を一歩ずつ歩く
京阪私市駅から徒歩で約40分。標高319mの普見山(ふみさん)の中腹にあるのが、「獅子窟寺」です。獅子窟寺ができたのは、今から約1300年前の奈良時代。聖武天皇の勅命により、僧行基が創建しました。最寄駅から住宅地をぬけると、急こう配の参道が現れます。この参道を登りきると、晴れた日には大阪平野が一望できる境内にたどり着きます。
国宝薬師如来坐像
「(獅子窟って)ちょっと変わった名前でしょう。弘法大師空海が修行したとされる巨岩が境内にあるんです。その岩が獅子の吠える口に似ているので、獅子窟といいます」と、吉川住職は言います。
「昔は、12のお堂があったんですよ。大坂夏の陣で、豊臣方に味方しなかったから、焼かれてしまいました」そのほとんどが消失してしまったという獅子窟寺。しかし平安時代につくられた国宝の薬師如来像は、その当時、僧侶たちの手によって、密かに奈良に疎開され、今日に伝えられています。
大阪に現存する国宝仏像は、全部で5件。そのうちの一つが獅子窟寺の「国宝薬師如来坐像」です。通常は保管庫に収蔵されていますが、事前予約で拝観できます。 カヤの一木造りで、高さは92cmと等身大よりやや大きく堂々とした姿。平安時代初期の仏像で、奈良時代の彫刻様式も見て取れる貴重な国宝です。
※国宝薬師如来坐像は、特別な許可を得て撮影しています。
「ずっと前に座って、眺めている方もいらっしゃいます」と、吉川住職。薬師如来像の静謐な空気は、見る人を惹きつける不思議な魅力があります。
亀山上皇とのつながり
境内に到着する前に、少し脇道にそれると「王の墓」と呼ばれる五輪塔があります。こちらは、鎌倉時代の亀山上皇と獅子窟寺のつながりを示すものです。
「亀山上皇が重い病気に掛かりはって、こちらの薬師如来に7日間祈願されたら、病が治ったと伝えられています」と、吉川住職は言います。 病気平癒に喜んだ亀山上皇は多額の寄進をして、その後の獅子窟寺の発展に寄与。その徳を称えるため、亀山上皇の死後に石塔が建てられました。当時が偲ばれる姿をひっそりと残しています。
巨岩信仰の足跡を求めて
本堂の横の階段を登ると、急に現れる巨岩群に驚かされます。交野市は、巨岩信仰にまつわる伝説が多く残っている地です。
寺の名前の由来となった「獅子窟」の巨大な岩が重なり合う重厚な姿は圧巻です。
弘法大師空海が、この獅子窟にこもり修行をしていると、北斗七星が落ちてきて、三ヵ所に降ったという「降星伝説」が語り継がれています。
最後に、地元交野について
「交野八景の世界がやっぱり好きやな。水もおいしいしね」と、自然が多いのが交野のよさだと、語ってくださる吉川住職。大阪や京都にも気軽に行けるアクセスのよさと、緑が多くて自然豊かな町の部分、そのちょうどよいバランスが魅力的だそうです。
吉川住職の穏和な姿の向こうに、獅子窟寺と交野の古い歴史が、後光がさしたように輝いて見えていました。