吉向松月窯
きっこうしょうげつがま
大阪で名窯と呼ばれる数少ない存在
古くから交通の要衝として栄えた大阪。人々や物資が行きかい、上方文化が花開きました。しかしながら、様々な事情が絡み合い、ついぞ焼き物の窯が育つことは、ほとんどありませんでした。
そんな大阪独特の「窯事情」において、吉向焼は異彩を放つ、大阪の名窯です。
吉向焼のはじまりは、江戸時代の享和年間。
約200年の歴史の中で、東大阪市の吉向十三軒と交野市の吉向松月に分かれつつも、その火を絶やすことなく、現代に受け継がれてきました。
その作品たちは、世界中に愛好家がおり、数多くの博物館・美術館に収蔵させています。
吉向焼の抹茶茶碗は楽焼と言われる、ろくろを使わず手びねりで完全な一品物です。
他にも、石膏を使った、型仕事という量産技術も持っています。
小さな作品だけではなく、食籠(じきろう)といった、大きな作品をつくるための型づくりも行っています。
なんと、初代作の型が今でも現存しているそうで、他にも歴史的な型が大切に継承されています。
住所 | ― | 大阪府交野市私市8丁目25−6 |
交通手段 | ― | 京阪「私市駅」から徒歩約15分 |
電話番号 | ― | 072-892-0811 |
営業時間 | ― | 9:00 ~ 17:00 |
定休日 | ― | 不定休 ※事前に電話でご確認ください |
WEB | ― | https://www.kikkogama.co.jp/ |
SNS | ― | |
駐車場 | ― | あり ※台数に限りがございます、事前にご確認ください |
自然あふれる風光明媚な場所
私市から月の輪滝へ向かう道中、四季折々の自然にあふれる風光明媚な場所に、吉向松月窯はあります。
生茂る木々の間に、小鳥の美しいさえずりが響きわたり、とても穏やかな気持ちになりました。
作品を制作する工房のほかに、展示販売所も併設されています。こちらの販売所は、営業時間内に限り出入り自由とのこと。
展示されている銘品を間近で鑑賞するもよし、お気に入りの逸品を見つけて購入するもよし、気軽に訪問できるスペースとなっています。散歩がてら訪ねてみるのもおすすめです。
併設されている素敵なお茶室で、お茶会が開催されることもあるそうです。
九世 吉向松月として
「それぞれの代で得意とするものがあり、
五代目は花入れ、
六代目は置物、
今の代は、茶道具もするけれども、創作の花器、そして風景画が入っています。」
諸々の技術は教えてもらうよりも見て学ぶことのほうが多いとのこと。先代の背中を見て育ち、DNAレベルで自身のものづくりへも受け継がれていると感じるそうです。
大量生産に向かった時代を乗り越えて、枚方から交野へ移ってからは、兄(八世松月)と二人三脚で、まき窯復活を模索するなど、原点へ回帰していきました。
箸置きやアクセサリーなどの日常遣いできる作品を企画。
六彩 月の輪工房といったサブブランドとして展開しています。
次世代の吉向焼の担い手たちが、吉向焼の裾野を広げるべく、積極的に活動されているとのこと。
表に置いてある陶器ガシャポンも彼らのアイデアです。気軽に吉向焼に触れることができるカジュアルな作品があると、吉向焼をより身近に感じることができます。
次代の吉向焼へ向けて
昔は百貨店で販売する、という意識しかなく、そのため、知る人ぞ知る存在に自らなってしまったのではないか、という思いがあると言います。
「地元にも吉向焼を知るきっかけがなかなかなく、知らせるすべがなかなかない。
一軒だけでやっていると、なかなか周知もできない。
歴史が逆に重みとなり、敷居の高さにつながってしまっているところもある。
やれていないことも沢山ある、改革のプランもある。」
私市小学校5年生の課外授業の「陶芸」がとても好評だそう。
他にもサークルの陶芸教室のサポートなど、ものづくりだけではなく、教えることでも窯を維持することを試行されています。
最近は、ホームページも開設。FacebookやInstagramも立ち上げて、PRに注力されています。
ホームページ上の美しい写真の数々は、工夫に工夫を重ねて自ら撮影されているとのこと。「これからは、もっと海外へも作品を紹介できたら…」と、吉向焼への尽きない思いを語っていただきました。
最後に、地元交野について
「交野市は、神社など観光資源もあり、深い歴史もある、観光ももっと盛り上げられるはず。
古来より地形よく、水よく、山もあり、とてもいい場所。」とお話しいただきました。
特に水がよいということは、土をねるためにとても大事だとのことです。